来淵島・人魚伝説 昔、来淵島には人魚がいました。 人魚は時折陸地に上がっては、島の人々を攫って海の神様の供物にしていました。 そんな時、旅の偉いお坊さんが来淵島にやってきました。 お坊さんが気合と共に、一枚の札を投げ込むと大渦が現れてたちまち人魚を呑み込んでしまいました。 その後、島の人たちは来淵島を守るために祠を建ててそこに海の神様を祭ることにしました。 |
■真魚の日記■ (2年前) お姉ちゃんのお見舞いに病院に行ったら捨て猫を見つけた。 怪我をしていて、どうしたらいいか困っていたら先生が助けてくれた。 先生が私の潔癖症について聞いてきた。 お姉ちゃんが入院したときに、私は消毒をしないで病室に入ろうとして担当の先生にひどく怒られたことがあって、それから綺麗な状態じゃないと耐えられなくなったと言った。 お姉ちゃんと先生が二人で話しているのをみかけた。 それだけなのに、すごく悔しかった。 先生と先に出会ったのは私なのに。私の方が先に先生を好きになったのに。 (1年前) お姉ちゃんと先生が結婚するのだと聞いた。 結婚を決めてお姉ちゃんは少し元気になったように見えた。 お姉ちゃんが心臓移植の為に東京の病院に転院するらしい。 先生もついていくんだって。 夫 だから仕方ないよね。 ダメなのに。先生はお姉ちゃんの旦那さんで、もう諦めなくちゃいけないのに。 お姉ちゃんが死んだ。移植手術は成功したのに、術後の経過が良くなかったみたい。 先生はもう来淵島には帰ってこない。お姉ちゃんももう二度と帰ってこない。 手を洗ったら、お姉ちゃんの感触が消えてしまった。 こうやって、忘れて行ってしまうのかな。 (1か月前) 不思議な夢を見た。黒い影が聞き取れない声で何かを囁く夢。 それは言葉じゃないのに、夢の中の私にはわかっているみたいだった。 (2週間前) 同じ夢を繰り返し見る。段々と近づいてきているような気がする。 もう少しで私にも聞き取れる気がする。 (1週間前) ようやく聞こえた。彼は私の願いをかなえてくれる存在。 私に“しもべ”を与えてくれるって。 「北の外れの空き地」に行ってみよう。 そこに行けばきっと、私の力になってくれるはず。 (昨日) 明日はお姉ちゃんの一回忌。 先生が帰って来る。そして、私の願いはついに叶うんだ。 泡はすべてを洗い流してくれる。 すべてなかったことにできる。この力があれば、きっと。 |